ジョブディスクリプション / 職務記述書

ポジション管理とは?企業の組織戦略を変革する人事マネジメント手法を解説
グローバル競争の激化や技術革新の急速な進展により、終身雇用や年功序列といった従来の日本型雇用モデルは大きな転換点を迎えています。
こうした状況下で注目を集めているのが「ポジション管理」という人事アプローチです。単なる組織管理の手法を超え、企業の競争力を強化する戦略人事の手法となるポジション管理は、先進的な企業で導入が進んでいます。
従来の「人に仕事を合わせる」発想から、「職務に最適な人材を配置する」という思考の転換がポジション管理の本質です。
本記事では、このポジション管理の目的や具体的な実践方法を解説していきます。
目次
ポジションとは?
ポジションとは、企業や組織内における「役割を担うための特定の席(ポスト)」を指します。これは、組織図における一つひとつの「配置された役割」であり、「誰が」「どの部署で」「どのような責任を持つか」を明確にする単位です。
たとえば、現在佐藤さんが営業部の営業課長を務めている場合、ポジションとは、この「営業課長という席」のことを指します。
つまり、人(従業員)が座るための「椅子」のようなものであり、人材管理や組織管理における基本的な単位です。
ポジションと「職務」の違い
「ポジション」と混同されやすい概念として「職務(ジョブ)」があります。それぞれ密接に関連していますが、明確な違いがあります。
違いを以下の表にまとめます。
項目 | ポジション | 職務 |
定義 | 組織内で個人が就く役割・席の単位 | 担うべき仕事の内容や責任範囲の定義 |
設置される数 | 一般的に1名分(ポスト) | 同じ職務が複数のポジションに割り当てられることもある |
管理の対象 | 組織図、役割配置、人のアサイン | 報酬設計、評価基準、等級制度などの基準 |
実際の例 | 「営業部 営業課長」 | 「新規顧客の開拓」「売上目標の達成」「部下のマネジメント」 |
つまり、ポジションは組織における席となる「箱」であり、職務がその箱の「中身」と理解するとイメージが付きやすいでしょう。
ポジション管理とは?その目的と意義
ポジション管理とは、組織内の各ポジションを体系的に管理・設計するマネジメント手法です。主に2つの重要な目的があります。
1. 組織構造の可視化とジョブ型人事の推進
ジョブ型人事制度の本質は、理想的な組織設計にあります。
従来の「人に仕事を合わせる」アプローチから脱却し、「仕事(ポジション)に最適な人材を配置する」戦略的な人事アプローチへ転換していきます。
ポジション管理を行うことによる具体的なメリットは、以下のようなものが挙げられます。
- 組織内の各ポジションの役割と要件を明確化できる
- 人員の最適な配置が可能になる
- 組織の構造的な課題の早期発見につながる
- 人材育成の方向性が明確化される
ポジションを可視化することで、強化が必要なポジションや、ポジション数に対して従業員数が多すぎるポジションなどを把握できます。
人員の最適配置や組織設計に役立てることが可能になります。
2. 戦略的なサクセッションプランの実現
サクセッションプランとは「後継者育成」のことを指します。
これまでの日本では、終身雇用の考え方が色濃く、新卒から定年まで同じ会社で働き続けることが一般的でした。長期雇用の前提で社員を徐々に育成しながら、幹部や管理職などの重要ポジションは経験年数の長い人材や年齢の高い人材に任せてきました。
しかし、グローバル競争が激化し、人材の流動性が高まる現代において、意識的かつ早期の社員育成・登用、後継者育成が不可欠になっています。
ポジション管理を適切に行うことは、サクセッションプランを推進するうえでも役立ちます。
具体的なメリットは、以下のようなポイントになります。
- 重要ポジションの後継者要件を明確化できる
- 候補者の早期選抜と育成が可能になる
- 組織の持続的な競争力を維持できる
- タレントパイプライン(人材候補のプール)を構築できる
ポジション管理により、どのようなポジションをサクセッションプランの対象とするか、社内に今どのような候補者がいるかなどを整理することができます。
ポジション管理の実践方法
ポジション管理を実践するためのポイントと具体的な実践ステップを解説します。
ツールと運用方法
1. 管理ツールの選択
簡易的なポジション管理は、Excelなどのツールでも実施できますが、本格的に実施する場合は、「Job-Us(ジョブアス)」などの専用ツールを利用することがおすすめです。
▼ポジションの管理・運用に特化したAIシステム「Job-Us(ジョブアス)」
https://job-us.jp/
ポイント
- ExcelやPowerPoint、マインドマップツール(miro、Mindmeisterなど)による組織図の作成・管理
- 専門的なHR管理ソフトウェアの活用
2. 定期的な見直し
各種ツールで整理したポジションは、整理して終わりではなく、定期的な見直しが必要です。
経営計画が変わったタイミング、四半期に一度のタイミングなどでポジションの修正・再整理を行います。
ポイント
- 最低でも年1回は組織構造・ポジションの再評価、整理を行う
- 大きな経営環境の変化に応じて柔軟に調整する
実践のためのステップ
ポジション管理の実践には、以下のようなステップを意識して行いましょう。
いきなりポジションの整理から始めるのではなく、「あるべき組織構造」の理想形を設計し、そのギャップ(As-Is/To-Be)としての現状のポジションを整理する、といった順序で行うことが重要です。
- 理想的な組織構造を設計する
- 現状のポジションとその人材配置を整理する
- 上記1と2のAs-Is/To-Beギャップを分析し、改善計画を策定する
- 改善のための施策実施と継続的なモニタリングを行う
ポジション管理は、ただ単に社内のポジションを管理するというわけではなく、組織変革につなげる施策として認識することが大切です。
ポジション管理導入のポイント
ポジション管理の導入は、一朝一夕には実現できません。以下の点に注意しながら、段階的に進めることが重要です。
- 既存社員への配慮や丁寧な説明を行う
- ブラックボックスにせず、透明性の高いプロセスで実施する
- 公正な評価基準を設定する
- ポジションの可視化だけでなく、継続的な育成支援まで接続させて実行する
まとめ
ポジション管理は、単なる人事管理手法ではなく、企業の組織変革を支える重要な戦略人事の手法です。
グローバル競争を勝ち抜くためには、組織と人材の戦略的マネジメントが不可欠となっています。従来の常識にとらわれず、戦略的な視点で組織と人材を捉え直すことが、これからの企業競争力を決定づけるでしょう。