報酬制度

自社の給与水準は適正?競合他社の給与の調べ方7選!転職を防止する給与設定
近年、転職が当たり前になる中で、他社からの年収アップのオファーで社員が早々に転職するケースが増加しています。優秀な人材の流出は企業にとって大きな損失であり、経営者や人事担当者にとって悩ましい問題です。
人材の流出を予防するうえで魅力的な報酬が重要な要素の一つですが、その報酬体系を設定するためには、競合他社の給与水準を把握することが不可欠です。
本記事では、競合他社と比較して適切な給与水準を設定するために欠かせない「他社の報酬水準を把握する方法」について詳しく解説します。
目次
【無料】他社の給与水準を調べる方法3選
まずは無料でできる競合他社の給与水準を把握する方法を3つご紹介します。
1. 採用エージェントに確認する
採用市場の最前線で活躍するエージェントは、業界の給与相場を熟知しています。
取引関係や信頼関係のあるエージェントに、「当社のエンジニアマネージャーの年収は○○万円程度ですが、市場水準と比較していかがでしょうか?具体的には○○社、△△社などの◇◇業界や、従業員★★人規模の企業と比較したいです」のように直接確認してみましょう。
以下のような観点がポイントです。
- 複数の具体的な企業名を挙げる
- 業界や企業規模などのベンチマーク条件を明確に伝える
- 単一企業の詳細よりも、範囲や傾向をヒアリングする
多くのエージェントは、特定企業の給与情報を直接開示ができませんが、複数の条件を提示したり、業界や規模などの範囲でヒアリングすることで、参考となる情報を回答してもらいやすくなります。
また、一部のエージェントは無料の給与調査レポートを提供していることもあるため、積極的に問い合わせてみましょう。
2. 退職者にヒアリングを行う
「実は〇〇社より、マネージャーポジションでオファーをいただき、退職することになりました。年収も今より100万円アップします」というような実際の社員の声を記録したり、転職が決まった社員へのヒアリングを行い、データ化しましょう。
退職理由だけでなく年収がどの程度変わるのかヒアリングできれば、貴重な市場情報になります。これらの情報を体系的に収集・分析することで、競合他社の給与動向を把握することが可能です。
以下のようなメリット・デメリットを念頭に置いて、情報収集を行いましょう。
メリット
- 直接的かつ具体的な競合他社の給与水準がわかる
- 自社を離れる決断をした理由として、給与がどの程度重要だったかを把握できる
デメリット
- 企業規模が小さい場合、サンプル数が限られる
- 離職者の情報だけでは偏りが生じる可能性がある
- 具体的な数字まで聞けないケースが多い
3. 交流会・名刺交換会で情報収集する
特定の業界の人事交流会や名刺交換会、海外での日本人交流会などは、様々な交流会が開かれています。こうした交流の場は、給与情報を入手できる貴重な機会です。
特に同業種・同規模の企業との情報交換は、市場相場を把握する上で非常に有益です。
交流会での情報収集には、以下のようなメリット・デメリットが挙げられます。
メリット
- 現場の第一線で活躍する人事担当者から直接一次情報を得られる
- 給与以外の福利厚生や評価制度など、報酬パッケージ全体の情報も聞くことができる
デメリット
- 具体的な数字まで聞けないケースが多い
- 参加企業によって得られる情報の質にばらつきがある
- 参加費が必要な場合がある
【有料】他社の給与水準を調べる方法4選
続いて、有料で競合他社の給与水準を把握する方法を4つご紹介します。
1. 労政時報・賃金センサスを活用する
労政時報や賃金構造基本統計調査(賃金センサス)などの専門的な統計資料を活用することで、業界全体の給与動向を把握できます。
労政時報の特徴
- 各種手当の詳細金額まで把握できる
- 業界別・職種別の詳細なデータが入手できる
- 定期的に更新される最新の給与動向を確認できる
賃金構造基本統計調査(賃金センサス)の特徴
- 厚生労働省が実施する大規模な統計調査
- 年齢、性別、学歴、勤続年数など多角的な切り口でデータ分析が可能
- 無料で閲覧できる基本データがある
統計的なデータとなるので、信頼性も高くなりますが、以下のようなデメリットもあります。
デメリット
- 対象企業が明示されていないため、特定企業の情報は入手困難
- 統計データのため、実際の市場動向とタイムラグが生じる可能性がある
2. 口コミサイトで情報収集する
OpenWork(旧Vorkers)、エンゲージ会社の評判(旧ライトハウス)などの口コミサイトは、企業の内部情報を得られる貴重な情報源です。
以下のようなメリット・デメリットを念頭に置き、情報収集を行いましょう。
メリット
- 現職・元職員の生の声を直接確認できる
- 給与だけでなく、評価制度や昇給実態なども把握が可能
- 企業の公式情報では得られない実態を知ることができる
デメリット
- 投稿情報が限定的で偏りがある可能性がある
- 離職者の情報は古くなっている場合がある
- 極端に満足度の高い(もしくは、低い)意見が集まりやすい
3. リサーチ会社へ調査を依頼する
専門のリサーチ会社に依頼することで、より詳細な情報収集が可能です。
実際に依頼する場合は、以下のポイントを意識するとよいでしょう。
- 知りたい情報を明確に箇条書きで提示する
- 優先順位の高い項目を明示する
- 予算と期限を明確に設定する
以下のようなデメリットがあるので、バランスを見ながら活用しましょう。
デメリット
- 全ての希望情報が入手できるとは限らない
- コストと得られる情報のバランスを考慮する必要がある
- 調査期間が必要となるため、急ぎの場合は向いていない
4. 専門的な報酬サーベイを利用する
マーサージャパン、タワーズワトソンなどの専門機関が提供する報酬サーベイは、最も信頼性の高い情報源の一つです。
以下のようなメリット・デメリットを考慮したうえで、実際に活用するか判断しましょう。
メリット
- 業界・規模・地域など多角的な切り口でのデータ分析が可能
- 定期的に更新される最新の市場動向を把握できる
- 基本給だけでなく賞与や福利厚生も含めた総報酬の比較が可能
デメリット
- 参加企業が限られるため、特定企業の正確な情報は得られない
- 導入コストがかかる
- 自社も情報提供する必要がある場合が多い
まとめ
市場競争力のある給与体系の構築や他社への転職を予防するためには、他社の報酬水準を正確に把握することが不可欠です。どの程度詳細な情報が必要か、どの程度予算を確保できるかに応じて、最適な情報収集方法を選択しましょう。
無料の方法は手軽に始められますが情報の精度に限界があります。有料サービスはコストがかかる代わりに詳細かつ正確なデータが得られます。複数の情報源を組み合わせることで、より精度の高い給与制度を立案でき、優秀な人材の流出を防ぐことができるでしょう。
自社に最適な給与水準を設定することは、単なるコスト管理ではなく、人材確保のための重要な投資です。定期的な市場調査を行い、常に競争力のある報酬体系を維持することが、長期的な企業成長につながります。