2024/10/11

ジョブディスクリプション / 職務記述書

コンピテンシー一覧44選!要素群や評価項目を具体例で紹介

コンピテンシーとは、高い業績を上げる人々に共通する行動の特徴のことです。近年、多くの企業が人材育成や評価の基準として注目しています。

本記事では、コンピテンシーの定義や歴史、具体的なコンピテンシーの要素群や評価項目を一覧化して詳しく解説します。

 

なぜコンピテンシーが重要なのでしょうか?

それは、単なる知識やスキルだけでなく、成功につながる行動パターンを理解することで、より効果的な人材マネジメントが可能になるためです。採用から評価、育成まで、幅広い場面で活用できるこの概念は、組織の成長に大きく貢献する可能性を秘めています。

ただし、コンピテンシーモデルの導入には注意点もあります。自社の特性に合わせた適切な設定や、定期的な見直しが欠かせません。これらのポイントを押さえつつ、コンピテンシーを活用することで、より強固な組織づくりにつながるでしょう。

 

本記事を通じて、コンピテンシーの基本から具体例までご紹介していきます。ぜひ最後までお読みください。

 

コンピテンシーとは

コンピテンシーは、高い実績を持つ人・パフォーマンスが高い人に共通してみられる行動の特徴を指します。優れた成果を上げる人には、ある程度の共通点があるのです。

特に注目すべきは、優秀な人々に見られる行動パターンです。これがコンピテンシーと呼ばれるものです。

行動パターンとは、個人特有の振る舞い方のことを指します。

 

一目では分かりにくいものの、業績に大きな影響を与えるため、注目を集めています。最近では大企業を中心に様々な企業で、コンピテンシーを活用した人事戦略や人事制度が導入されています。

コンピテンシーを詳しく調べることで、高い成果を生み出す根本的な要因が明らかになります。

 

成果重視の考え方が広まるにつれて注目度が上昇

最近のビジネス界では、成果を重視する考え方が浸透しつつあります。

成果主義では業績に基づいて評価を行いますが、表面的な結果だけで判断すると、客観性に欠ける場合があります。偶然得られた成果かもしれないからです。

 

一方、分析によって明らかになったコンピテンシーに基づく行動ができているかを基準にすれば、その人の真の能力を適切に判断できます。

さらに、明らかになったコンピテンシーを組織内で共有することで、優秀な社員を増やすことができるのです。

 

コンピテンシーの起源

コンピテンシーは、1970年代にアメリカのハーバード大学の心理学者デイビッド・マクレランド(DAVID McCLELLAND)教授らの研究から生まれました。

彼らは、同程度の知識や知能を持つ外交官の中で、なぜ成果に差が出るのかを調査しました。その結果、高い成果を上げた外交官に共通する特性として「異文化に偏見がない」という点が浮かび上がりました。

この発見により、目に見える能力や成果の背後には、潜在的な動機や能力、行動特性があることが注目されるようになりました。

また、同氏が1973年「Testing for Competence Rather Than for “Intelligence”」と題した論文を発表したことで、ビジネス業界において「コンピテンシー」という言葉が知られるようになりました。

 

日本では、仕事をこなすのに必要な判断力や協調性を評価する「職能技能」という考え方が、より具体的な知識や経験を表すものとして受け入れられてきました。

 

コンピテンシー評価項目の具体例44選

コンピテンシー評価項目の具体的な要素群・コンピテンシー・評価内容を例示します。

「自己認知・成熟性」「対人」「業務遂行」「リーダーシップ」「マネジメント」の5つの要素群に分類し、合計44個のコンピテンシーの具体例をご紹介します。

 

要素群 コンピテンシー 評価内容
自己認知・成熟性 ビジネスリテラシー 社会人として適切な言葉遣いや振る舞いを行う
ITリテラシー 業務遂行に必要なPC・ITスキルを習得し、セキュリティ等にも留意しながら活用する
自律志向 自ら考えて主体的に行動する
ストレス管理 困難な状況やプレッシャーのかかる場面においても、適切にストレスに対処し、パフォーマンスを維持する
自己改善 自分の強みや弱みをメタ認知し、継続的に改善する
プロフェッショナリズム 高い職業倫理と責任感を持ち、業務に取り組む
学習意欲 新しい知識やスキルを習得し、自己成長を続ける
チャレンジ精神 新たなプロセスやテーマを検討し、リスクをとりながら取り組む
対人 顧客志向 顧客の期待やニーズを理解し、それを超えるサービスを提供して顧客満足を追求する
コミュニケーション力 相手に伝わる言葉やストーリーでコミュニケーションを行う
ヒアリング力 相手の意見や事実を聞き出し、正しく整理、理解する
関係構築力 業務上関わる社内外の人との良好な関係性・信頼を築く
交渉力 相手のニーズを理解し、交渉を通じて双方の利益を最大化する
プレゼンテーション力 的確に内容を伝え、相手を理解・納得に導く
ライティング力 明確で効果的な文章を作成し、意図を伝える
対応力 顧客からの不満やクレーム、問題に冷静かつ適切に対応する
業務遂行 正確性 業務の細部、詳細に関しても正確に業務を遂行する
情報収集力 業務遂行上必要な情報を適切なリソースから収集する
計画力 プロジェクトの目標達成に向けた計画を策定する
計画実行力 進捗状況の確認や調整を行いながら、計画通りの業務遂行を行う
達成志向 高い目標を設定し、それに向けて積極的に取り組み結果を生み出す
分析力 データや状況を客観的に分析し、課題の本質を見極める
問題解決力 課題を特定し、実行可能な解決策を見つける
ロジカルシンキング 事象を体系的に整理した上で、筋道を立てて合理的な結論を導く
クリティカルシンキング 目的に立ち返り、物事を批判的に分析する
改善力 既存プロセスの問題点や改善すべき点などを発見・整理し、効率と品質を向上させる
優先順位付け 多数の業務の中から最も重要なものを見極め、効率的に管理する
アイデア思考 新たな発想を生み出し、業務への活用を考える
適応力 環境や状況の変化に柔軟に対応する
創造性 創造的に思考し、新しいアイデアやアプローチを開発する
持続力 長期的な課題にも諦めず、粘り強く取り組む
リーダーシップ ビジョン構築 明確なビジョンを設定し、それを達成するための戦略と行動を主導する
意思決定力 分析、経験、判断を総合的に活用し、迅速かつ効果的に最適な選択をする
規律性 自身が体現させていることを前提とし、規則やルールなどをメンバーに厳守させる
チームビルディング 効果的なチームを構築し、メンバーの成長とチームの目標達成をサポートする
影響力 自己の行動や言動により、他者や組織にポジティブな影響を与える
マネジメント 組織理解 会社の経営理念や事業領域、業務遂行上に必要な部門のステークホルダーなどについて理解する
戦略的思考 中長期的な視点を持ち、組織の目標達成に貢献する戦略を考案する
リスク管理 将来発生するリスクや課題に対して着眼し、予防策や代替案などを準備する
業務管理力 多様な業務を効率的に計画し、進捗確認・調整を行いながら業務を行う
コーチング 個々のメンバーの能力を引き出し、成長と発展を促す
人材育成 メンバーに動機づけを行い、新しい仕事へのチャレンジを促し、スキルや資質を長期的に育成する
フィードバック 評価者としての視点をもち、メンバーに対して改善点などをはっきりと伝える
コンプライアンス 法令や規則を遵守し、適切な行動を取る

 

要素群1:自己認知・成熟性

1つ目の要素群は「自己認知・成熟性」です。

自己認知・成熟性のコンピテンシー例として「ビジネスリテラシー」「ITリテラシー」「自律志向」「自己改善」「プロフェッショナリズム」「チャレンジ精神」の6つをご紹介します。

  • ビジネスリテラシー
    • 社会人として適切な言葉遣いや振る舞いを行う
  • ITリテラシー
    • 業務遂行に必要なPC・ITスキルを習得し、セキュリティ等にも留意しながら活用する
  • 自律志向
    • 自ら考えて主体的に行動するストレス管理困難な状況やプレッシャーのかかる場面においても、適切にストレスに対処し、パフォーマンスを維持する
  • 自己改善
    • 自分の強みや弱みをメタ認知し、継続的に改善する
  • プロフェッショナリズム
    • 高い職業倫理と責任感を持ち、業務に取り組む学習意欲新しい知識やスキルを習得し、自己成長を続ける
  • チャレンジ精神
    • 新たなプロセスやテーマを検討し、リスクをとりながら取り組む

 

要素群2:対人

2つ目の要素群は「対人」です。

対人のコンピテンシー例として「顧客志向」「コミュニケーション力」「ヒアリング力」「関係構築力」「交渉力」「プレゼンテーション力」「ライティング力」の7つをご紹介します。

  • 顧客志向
    • 顧客の期待やニーズを理解し、それを超えるサービスを提供して顧客満足を追求する
  • コミュニケーション力
    • 相手に伝わる言葉やストーリーでコミュニケーションを行う
  • ヒアリング力
    • 相手の意見や事実を聞き出し、正しく整理、理解する
  • 関係構築力
    • 業務上関わる社内外の人との良好な関係性・信頼を築く
  • 交渉力
    • 相手のニーズを理解し、交渉を通じて双方の利益を最大化する
  • プレゼンテーション力
    • 的確に内容を伝え、相手を理解・納得に導く
  • ライティング力
    • 明確で効果的な文章を作成し、意図を伝える対応力顧客からの不満やクレーム、問題に冷静かつ適切に対応する

 

要素群3:業務遂行

3つ目の要素群は「業務遂行」です。

業務遂行のコンピテンシー例として「正確性」「情報収集力」「計画力」「計画実行力」「達成志向」「分析力」「問題解決力」「ロジカルシンキング」「クリティカルシンキング」「改善力」「優先順位付け」「アイデア思考」「適応力」「創造性」「持続力」の15個をご紹介します。

  • 正確性
    • 業務の細部、詳細に関しても正確に業務を遂行する
  • 情報収集力
    • 業務遂行上必要な情報を適切なリソースから収集する
  • 計画力
    • プロジェクトの目標達成に向けた計画を策定する
  • 計画実行力
    • 進捗状況の確認や調整を行いながら、計画通りの業務遂行を行う
  • 達成志向
    • 高い目標を設定し、それに向けて積極的に取り組み結果を生み出す
  • 分析力
    • データや状況を客観的に分析し、課題の本質を見極める
  • 問題解決力
    • 課題を特定し、実行可能な解決策を見つける
  • ロジカルシンキング
    • 事象を体系的に整理した上で、筋道を立てて合理的な結論を導く
  • クリティカルシンキング
    • 目的に立ち返り、物事を批判的に分析する
  • 改善力
    • 既存プロセスの問題点や改善すべき点などを発見・整理し、効率と品質を向上させる
  • 優先順位付け
    • 多数の業務の中から最も重要なものを見極め、効率的に管理する
  • アイデア思考
    • 新たな発想を生み出し、業務への活用を考える
  • 適応力
    • 環境や状況の変化に柔軟に対応する
  • 創造性
    • 創造的に思考し、新しいアイデアやアプローチを開発する
  • 持続力
    • 長期的な課題にも諦めず、粘り強く取り組む

 

要素群4:リーダーシップ

4つ目の要素群は「リーダーシップ」です。

リーダーシップのコンピテンシー例として「ビジョン構築」「意思決定力」「規律性」「チームビルディング」「影響力」の5つをご紹介します。

  • ビジョン構築
    • 明確なビジョンを設定し、それを達成するための戦略と行動を主導する
  • 意思決定力
    • 分析、経験、判断を総合的に活用し、迅速かつ効果的に最適な選択をする
  • 規律性
    • 自身が体現させていることを前提とし、規則やルールなどをメンバーに厳守させる
  • チームビルディング
    • 効果的なチームを構築し、メンバーの成長とチームの目標達成をサポートする
  • 影響力
    • 自己の行動や言動により、他者や組織にポジティブな影響を与える

 

要素群5:マネジメント

最後5つ目の要素群は「マネジメント」です。

マネジメントのコンピテンシー例として「組織理解」「戦略的思考」「リスク管理」「業務管理力」「コーチング」「フィードバック」「コンプライアンス」の7つをご紹介します。

  • 組織理解
    • 会社の経営理念や事業領域、業務遂行上に必要な部門のステークホルダーなどについて理解する
  • 戦略的思考
    • 中長期的な視点を持ち、組織の目標達成に貢献する戦略を考案する
  • リスク管理
    • 将来発生するリスクや課題に対して着眼し、予防策や代替案などを準備する
  • 業務管理力
    • 多様な業務を効率的に計画し、進捗確認・調整を行いながら業務を行う
  • コーチング
    • 個々のメンバーの能力を引き出し、成長と発展を促す人材育成メンバーに動機づけを行い、新しい仕事へのチャレンジを促し、スキルや資質を長期的に育成する
  • フィードバック
    • 評価者としての視点をもち、メンバーに対して改善点などをはっきりと伝える
  • コンプライアンス
    • 法令や規則を遵守し、適切な行動を取る

 

まとめ

コンピテンシーは、優れた成果を出す人々に共通する行動の特徴を指します。

自社の理想像や優秀な社員を基に独自のモデルを構築すれば、採用面接や人事評価、社員教育などの場面で効果的に活用できます。表面的な能力や実績だけでなく、内面まで踏み込んだ確かな判断が可能になるでしょう。

ただし、注意すべき点もあります。過度に高度なモデルを作成したり、更新を怠ったりすると、現実との隔たりが生じる可能性があります。このリスクを認識し、コンピテンシーモデルを適切に運用することが大切です。

 

コンピテンシー項目やモデルの設定には多くのメリットがありますが、自社の特性やニーズに合わせた項目設定が不可欠です。理解すべきポイントも少なくありません。

近年、企業は求める人材像を明確にするため、さまざまな取り組みを行っています。

例えば、

  • 新卒採用の基準としてコンピテンシー項目を活用する
  • 既存の人事評価制度にコンピテンシーの考え方を組み込む

といった動きが増えてきています。

本記事で紹介したコンピテンシー項目一覧を参考にしてみてください。自社の人事戦略にどのように取り入れられるか、検討する価値は十分にあると言えます。

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